kdnakt blog

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今週気になったTLS関連のニュース #167

2024年7月22日~2024年7月28日に読んだ中で気になったニュースとメモ書きです。社内勉強会TLSらじお第167回分。

[IETF 120]

こちらのツイートから。

IETF 120のアジェンダはこちら。

datatracker.ietf.org

Areionの発表以外にもたくさん。

TLS関連だとこんな感じ。

期限切れになってしまっているけど、X25519じゃなくてsecp256r1とKyberのハイブリッド鍵交換のドラフトもあったみたい。

datatracker.ietf.org

NISTの耐量子暗号標準ももうすぐ公開されそう。

[Let's Encrypt: Intent to End OCSP]

こちらのツイートから。

リンク先はこちら。

letsencrypt.org

証明書の有効期限前の失効をチェックする方法は主にCRL(Certificate Revocation List)とOCSP(Online Certificate Status Protocol)の2種類がある。

最初はCRLで失効チェックが始まって、証明書の増大とともにCRLのサイズ増加が問題になってOCSPが使われるようになって、プライバシーの問題のためクライアントが直接OCSPを利用する方式から、サーバが利用するOCSPステープリングという方式が追加された。

Let's Encryptは元々OCSPのみをサポートしていたが、2022年にCRLのサポートを追加した。背景としては、FirefoxのCRLiteやChromeのCRLSetsといった、ブラウザによる事前の失効確認の仕組みがあった。

kdnakt.hatenablog.com

今回のOCSP廃止については、先述のプライバシーの課題以外にも、CA/B ForumでのOCSP非必須化という背景や、CAインフラのシンプル化という目的もあるようだ。

Microsoftのルートストアポリシー上はまだOCSPが必須となっているが、これが任意となり次第(Let's Encryptによると1年以内?)Let's EncryptはOCSP廃止の計画を発表する予定とのこと。

日本語の記事も出ていた。

gigazine.net

[その他のニュース]

▼NETLOCKのMozillaルートストアポリシー違反

こちらのツイートから。

リンク先はこちら。

bugzilla.mozilla.org

Mozillaのルートストアポリシーでは、中間CAの証明書がCCADB(Common CA Database)に登録されている必要があるが、NETLOCKという認証局がこの要件を見たさず問題になっている様子。

他のルートストアポリシーでも似たような要件があるのだろうか...ストアごとの違いが難しい。

▼HTTP/2 AES-256

こちらのツイートから。

リンク先はこちら。

www.ietf.org

HTTP/2で必要となるTLSに関する要件を定めたドラフトが出ているみたい。

HTTP/2を定めたRFC 9113では、TLS_ECDHE_RSA_WITH_AES_128_GCM_SHA256を必須要件として定めているが、量子コンピュータを考慮するとこれは安全ではないため、追加でTLS_ECDHE_RSA_WITH_AES_256_GCM_SHA384のサポートを必須としよう、という話らしい。

▼Entrustの今後の計画

こちらのツイートから。

リンク先はこちら。

www.entrust.com

RAとCAは概念上別物、という説明はWeb PKIを学ぶと出てくるけど、実務上ほぼ一緒だよなあ...と思っていたら分離の事例が。なるほど。

SSL.comがパートナーになるのは、Entrustのルート証明書Chromeに信頼されるまでのつなぎっぽい。

▼OpenSSLの新しいガバナンス体制

こちらのツイートから。

リンク先はこちら。

github.com

アカデミックコミュニティへの参加を呼びかけるとともに、企業と非営利法人に分裂する話も。

OpenSSLミッションの対象となるのはOpenSSLだけでなく、BouncyCastleとcryptlibのプロジェクトも対象となっているらしい。

openssl-library.org

資金難に陥ったり、Heartbleedバグを出したりしていたころとは随分様変わりした気がする。

▼Transparency.dev Summit開催予定

こちらのツイートから。

リンク先はこちら。

https://blog.transparency.dev/join-us-at-the-transparencydev-summit

CT(Certificate Transparency)に限らず、暗号学的な透明性に関するカンファレンスが10月にロンドンで開催されるらしい。なんか面白い話ありそう。

[おわりに]

惑星間DNS...太陽系インターネット...夢のある話だ。

www.ietf.org